銀河系売ります        作 奥原水穂

 事務所の机に着くなり、販売部長の川田は大声で部下を呼びつけた。
 「日下部くん。T―COSMOSの売れ行きはどうだね?」
 商品名T―COSMOS。
 直径50センチメートルの球体に浮かぶ、人工的に造られた小さな銀河系宇宙。
 科学技術の躍進により、疑似銀河系の創造が実現した。それを強化プラスチックの球体に閉じ込めたものが、T―COSMOSだ。
 この商品の優れているところは、その、銀河系が生きているという事。
 星は成長し、その大きさを変えやがては消滅する。そして、また新たな星が誕生するのであった。
 しかも、その星の成長が短時間で見ることができる。
 小学校の教材用として開発されたT―COSMOSだが、今では各家庭の調度品として、上々の売上を伸ばしていた。

T―COSMOSの販売から一年。
 自宅の居間に置かれたT―COSMOSを眺めていた日下部は、驚きの声を上げた。
 数日前、銀河系の隅で星の一つが爆発したのは彼も知っていたが、その場所には黒々とした点が浮かび、他の星を飲み込んでいるではないか。
 「これが、ブラックホールか!」
 日下部が深い感慨に浸っている間にも、星々は次々飲み込まれて行く。
 そして、銀河系は少しずつ点に向かって縮小され、それを包む強化プラスチックは、内側からの力に歪み、亀裂が入った。
 ぱあぁぁぁん!
 銀河系を飲み込んだ黒い点は、強化プラスチックを破壊すると、近くに置いてあった書類をも飲み込み始めた。
 「これは大変だ! すぐ川田部長に報告しなくては!」
 興奮し、上ずった声で日下部は呟いた。
 「ブラックホールを利用して、ゴミ箱を開発するんだ。これは売れるぞ!」

                         END