カウンセリングのススメ

第八回

精神病は一人一人似ているけど異なった体験をするようです。今回は僕自身の体験を少し書いてみようと思います。  

Wendy21 米 島 健 二

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 3歳か4歳の頃、家族で鹿児島山奥の父の実家へ遊びに行った。村の盆踊りの帰り、漆黒の山道を五人家族でつないだ腕を大きく振って歩いていた。森を抜け、ふと光を感じてあおぐ夜空。
 宇宙が開闢(かいびゃく)して以来、あらゆる時に放たれた光が、一斉に降り注ぐ。
 広がる満点の星。僕は眩暈(めまい)を覚えた。
 それ以来か、目を閉じると星雲や、幾何学模様が焼きついて見えてくる。宇宙というとてつもなく巨大な生命体の目を意識するようになった。

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 27歳の時、プログラマーだった僕は大きい仕事が終わって、特に理由もなく鹿児島県の屋久島に行った。空港から乗ったタクシーが「まず見てみなさい」と、展望の小山へ案内してくれた。島の中腹の一枚岩を流れ落ちる「?せんぴろ?千尋?の滝」が圧巻のダイナミックな光景が一望できた。
 360度人工物の無い世界。神を感じて僕は再びあの眩暈(めまい)を覚えた。

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 この宇宙の深遠な美しさに震え、神に愛されてこの世界に生まれた幸福を感じた。その時僕が抱えていた様々な悩みが一挙に解決された。すべてが小さなことだった。

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 33歳の時発病した。原因は働きすぎか悩みすぎか、自ら実験台になって開発にあたったリラクゼーションシステムのせいか……。いずれにしろ仕事の無理がたたったせいだと思う。幾度となく襲ってくるあの眩暈(めまい)に働くことはおろか、日常生活も出来なくなっていった。
 家にも帰れず不思議の世界の住人になり、あのまま放っておかれたら浮浪者になって道端で冷たくなっていたかも知れない。幸いすぐに電話で異常を察知した親が東京まで飛んできて僕を探し出し新門司病院に入院させ、事なきを得た。
 病名は精神分裂病。四年ほど入退院を繰り返した。

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 今年で39歳になるが時折の症状が残り、まだまだ病気とも病院とも縁を切ることは出来そうもない。
 以前のようにバリバリ仕事が出来るようになるかどうかは疑問だが、今の生活は落ち着いており、体を使った仕事やパソコンという特技を生かした活動で充実した感謝の日々を送っている。

※精神病のどこが恥ずかしいか? ※精神病の原因と対処
 病気を恥ずかしいと感じるのは何故か? 中年を過ぎるとやたら自分の病気を自慢する人がいて、やれ血圧が高いの、肝臓が弱ってるのと。だが幻聴を自慢する人は滅多にいない。
 極端な話だけどエイズ、「いやあ、二丁目で男娼を買ったら移されちゃったヨ」なんて気軽に公表できるか? 「シンナーの吸いすぎで脳がいかれた」「女に振られておかしくなった」。いばって言えるか?
 「自分でもわからないうちにおかしくなった」って人が結構多い。精神病をウイルスのような何か一つの原因で特定するのは難しい。原因が解明したところで、それを治療に結びつけるシステムもあまり知らない。症状を抑える方法を解明するのにまだまだ力がいる。したがって医者も学者も原因についてはあまり興味を持たない人が多いようだ。人生の数だけ原因はある。
 原因が恥じるものでなければ、隠したりする必要はないと思う。差別はスル側が悪いのであって、サレル側に一切責任は無いと考えたい。
 脳内の神経情報伝達物質の分泌過不足による、情報処理の混乱が起因と考える説が有力のようです。そこで薬による脳内の調節が必要なわけです。
 直接脳内の物質を制御することは難しいので、種々の薬物で一定の負荷をかけることによりバランスが崩れるのを防ごうというのが、現代の薬物療法の根拠だそうです。
 近眼の人が眼鏡等で視力を矯正する。糖尿の人がインシュリン等や食物療法で血糖等を調節するのと同じだそうです。もっともこれは大雑把な考え方で、実際はもっと複雑な問題が絡みあっているのでしょうが、薬を勝手に中途でやめるということは、大変危険だということです。
 「精神病の原因は遺伝である。障害者同士が結婚して子供を産んだ場合、1/2の確率で障害が生まれる」などとまことしやかに家族懇談会で語った医者がいました。でも遺伝に関しては僕はどうかなと思います。